元従業員からの未払賃金・残業代・慰謝料の請求を労働審判で争い、請求額の約1/3で解決できた事例

業種:建設業
相談内容・お困りの問題のキーワード:人事・労務、未払賃金、残業代、慰謝料、損害賠償、労働審判
担当弁護士:阿部貴之、小林玲生起

相談内容

退職したはずの元従業員から弁護士を通じて、未払賃金(残業代含む)を請求された。また、在職中に役員から合計3回の暴力を受けたとして慰謝料を請求された。

主な争点

①会社と元従業員との間で、月額給与をいくらで合意したか

②固定残業代を残業代に充当できるか

③役員からの暴行は存在するか。存在するとして、慰謝料請求可能な程度か

弁護士の対応・解決内容

結論としては、慰謝料額は0にし、また、会社が元従業員に支払うべき金額は請求額の約1/3にすることができました。

本件では、会社が労働契約書を提示していたにもかかわらず、元従業員が労働契約書に署名しないまま、労務の提供を行っていた事案でした。そのため、給与額が争いになりました。

しかし、経緯などを詳細に説明しつつ当方主張の給与額が正しいことなどを反論したところ、相手方が労働審判を申し立ててきました。

労働審判では、

争点①(月額給与額)について

◯元従業員から会社が労務提供を行うに至るまでの経緯、会社における給与最高額の者が元従業員主張の給与額よりも低いこと、元従業員が高給を取れるほどの能力を有していないことなどを丁寧に主張立証

◯法令、就業規則、慣習に基づき、残業代算定の基礎となる賃金額を、具体的かつ詳細に主張立証

争点②(固定残業代の残業代への充当)について

〇固定残業代が未払残業代に充当されるべき性質のものであることを、判例・裁判例を踏まえて主張立証

争点③(役員の暴行の慰謝料)について

◯第1回目・2回目の「暴行」については、元従業員と役員との間の関係性(仲良く食事をしていたなど)、元従業員の勤務態度(注意指導をきちんと守っていなかったことなど)、身体接触に至る経緯・具体的内容を詳細に述べて、慰謝料を発生させるような暴力が振るわれていなかったことを主張立証

◯第3回目の「暴行」については、単に過失による致傷行為であること、既に示談が済んでことなどを指摘して、追加の慰謝料請求権は存在しないことを主張立証

致しました。

また、元従業員が会社に支払うべき損害賠償金が存在しており、それが未払賃金と相殺されるべきことも主張立証しました。

その結果、慰謝料額は0、未払賃金と元従業員が会社に支払うべき損害賠償金を相殺して最終的に会社が支払うべき金額が相手方の請求額の約1/3に減額された内容で労働審判上の和解成立という解決となりました。

弁護士の所感・コメント

未払賃金・残業代について

未払賃金や残業代については、労働基準法37条及び労働基準法施行規則19条・21条に基づき、算定の基礎となる賃金額を算定しなければなりません。しかし、この算定の仕方は、事業主の方たちが想像している以上に厳密で煩雑なものです。

上記法令、労働契約書、就業規則、タイムカードなどをきちんと読み解いて正確に算定することは、通常業務で多忙な社長や担当者の方では、なかなか出来るものではないと思います。

その点、相手方に弁護士が就いた段階から、弊所にご相談・ご依頼して頂いたことで、充実した主張立証をすることができ、上記のような勝訴的和解を獲得できたものと思います。

固定残業代について

また、判例・裁判例の判示や傾向によれば、固定残業代を割増賃金(残業代)に充当するためには、事業主の方たちが思っている以上のハードルがあります。判例・裁判例を踏まえて、適切な主張立証をしていく必要がありますが、複雑な固定残業代の法理を理解することは容易ではありません。

固定残業代が問題になった場合には、労働法務の専門家に早めに相談して、訴訟や労働審判になった場合には、果たして割増賃金への充当が認められるのかの見通しを立てておくべきでしょう。

労働審判について

労働審判は、申立書と答弁書などで主張を闘わせるという意味で民事訴訟に類似しています。しかし、訴訟とは異なり、原則3回以内の期日で終了するという特殊性を有しています。3回以内とは言っても、現実的には、第1回期日までに主要な主張立証を済ませることが求められ、第2回期日では補充的な主張立証しか出せません。

このため、労働審判を申し立てられた側(多くは会社側)からすると、準備時間が非常に短く、とても苦労します。

本件では、労働審判に至る前の紛争段階からご依頼頂いておりましたので、労働審判に移行することも見据えて事前準備をすることができました。

不十分な準備のまま労働審判期日に臨むといったことがないよう、労働紛争になった段階から早めに弁護士にご相談することをお勧めいたします。また、仮に、労働審判期日が申し立てられてしまった場合には、一刻も早く弁護士に相談に行きましょう。

 

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弁護士法人シーライト藤沢法律事務所

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応、)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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