テレワーク導入に当たって労務管理・労働法上注意すべき点のご相談

業種:学術・開発研究機関
相談内容・お困りの問題のキーワード:テレワーク、コロナ対策、在宅勤務、労務管理、就業規則、労使協定
担当弁護士:阿部貴之、小林玲生起

相談内容

学術・開発研究を行っている法人様からのご相談です。

新型コロナウィルス感染拡大予防の観点などからテレワークを導入しようと考えているが、労務管理上及び労働法上注意すべき点を教えて欲しい。

主な論点・争点

テレワーク導入時の労務管理・労働法上の主な注意点。

弁護士の対応・回答の概要

テレワークには、①在宅勤務型(所属するオフィスに出勤しないで自宅を就業場所とする勤務形態)、②モバイルワーク型(飛行機,新幹線などの移動時,顧客先,カフェなどを就業場所とする勤務形態)、③サテライトオフィス型・施設利用型(所属するオフィス以外の他のオフィスや遠隔勤務用施設を就業場所とする勤務形態)の三種がありますが、ご相談者様は、上記①在宅勤務型の導入を検討されていましたので、これを念頭に以下のようにご回答いたしました。

(1)ITツールを用いて労働時間の管理・把握をきちんと行う

テレワークのデメリットとして、「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」「長時間労働になりやすい」(労働者側)、「労働時間の管理が難しい」が最も上位に挙がっており,労働時間管理が最も重要な課題とされています(厚労省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」5頁)。

労働法上も、使用者は、過労防止の観点などから労働者の労働時間を把握する義務を負っています(労働安全衛生法66条の8の3・66条の8の4、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。

そこで、上記ガイドラインに沿って、労働者の労働日ごとに、始業時刻及び終業時刻が記録される形で、労働時間の管理を行うべきことをアドバイスいたしました。そうしたところ、相談者様においては、労働者から上司にメールで始業時刻及び終業時刻を行っているということでしたが、弊所で行っている在宅勤務の労務管理実務上の観点から、以下のような追加のアドバイスもいたしました。

①在宅勤務者は、いわば「周りに止める人がいない」状態なので、いきおい長時間労働になりがちです。また、在宅勤務者は、出勤者がどのような状況(休憩中・早退・遅刻・退勤など)にいるのか分からないので、両者でコミュニケーションがすれ違ってしまうことがあります。

②そのため、上司はもちろん、他の従業員にも、「始業」「終業」が把握できるようにし、「周りの目」を付ける仕組みを作ったほうがよい。弊所の実践例として、従業員全員が参加している社内チャットで「出勤・休憩・退勤報告」というスレッドを建てて、チャットで報告し合っています。

③日本テレワーク協会が、勤怠管理アプリ、在席管理(プレゼンス管理)アプリなどを紹介してくれているので、自社にあったものを導入してみるとよいでしょう。

https://japan-telework.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/05/Telework-related-tools-list-5.0.pdf

https://japan-telework.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/Telework-products-recommended-for-small-and-medium-sized-businesses.pdf

(2)労使協定や就業規則の整備が必要な事柄

ア 時間単位有給休暇を定める場合

有給休暇は、日単位が原則です。しかし、テレワークでは、労働者がオフィスにいない時間が多くなるため、いわゆる「中抜け」が生じやすく、労働者もこれを希望しやすくなると言われています。そのため、時間単位有給休暇を定めておくことが望ましいでしょう。

時間単位有給休暇を導入するには、労基法39条4項所定の事項を労使協定で締結した上で(労基法39条4項)、就業規則を変更する必要があります(労基法89条1号)。

イ 休憩時間を一斉付与の例外を定める場合

休憩時間は、労働時間が①6時間超8時間以下の場合には45分、②8時間超の場合には1時間を、労働時間の途中に、労働者に一斉に与えることが原則です(労基法34条1項・2項本文)。しかし、テレワークでは、オフィス勤務と異なり、各々が労働時間を管理する様相が強くなってきます。そこで、休憩時間を一斉に付与する方式より、休憩時間を労働者の裁量で取ることのできる体制が勤務の実態に合っているといえます。

休憩時間一斉付与の例外を定める場合には、労使協定を締結する必要があります(労基法34条2項但書)。

ウ フレックスタイム制を設定する場合

テレワークは、オフィスに出勤しなくてもよい働き方であるため、フレックスタイム制と親和性の高いものです。フレックスタイム制とは、一定の期間(清算期間)について予め定めた総労働時間の範囲内で、⽇々の始業・終業時刻を労働者自らが決定できることによって、労働時間を柔軟に調整できる制度のことです。詳しくは、厚労省作成の「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」(https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf)をご覧ください。

フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則で始業時刻及び終業時刻を対象労働者の決定に委ねる旨を定め、かつ、対象労働者・清算期間・清算期間内の総労働時間などを労使協定で締結することが必要です(労基法32条の3)。

弁護士の所感・コメント

2020年1月頃からの新型コロナウィルスの急速な感染拡大により、感染を極力防ぐことのできる働き方として、テレワーク、特に在宅勤務がにわかに注目を浴びました。

しかし、労働法やこれまでの労務管理は、オフィス勤務を念頭に置いて制定・運用されていましたので、テレワークを導入するに当たって、注意しなければならない諸点は多数あります。まずは、上記で紹介した日本テレワーク協会(https://japan-telework.or.jp/suguwakaru/)や、厚労省の「テレワーク総合ポータルサイト」(https://telework.mhlw.go.jp/)で述べられていることを実践することが大事になります。

ところが、実際にテレワーク・在宅勤務を行っていないと、具体的な働き方のイメージを巡らせることが難しいため、上記サイト等で述べられていること以上に実用的なアドバイスをすることは難しいといえるでしょう。その点、弊所では、2020年4月~5月の緊急事態宣言時に、ほぼ100%の在宅勤務を経験いたしましたので、この経験に基づき上記のような実体験に基づくアドバイスをすることができたものと自負しております。

弊所では、実際に行ったテレワーク・在宅勤務の経験に基づいた労務管理の実践的なアドバイスが可能ですので、これらについてお悩みの方は、弊所にお気軽にお問合せください。

 

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