コロナ禍を機とした週休3日制導入の検討

従業員を休ませる場合の休業補償と雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)の活用

1.週休3日制導入の検討

一定規模以上の大企業については2019年4月1日から、中小企業についても2020年4月1日から、働き方改革関連法が適用されるようになりました。

そのような中、日本マイクロソフトの取り組んだ週休3日制導入の結果が2019年10月31日に公表されました。

日本マイクロソフトの取り組みは、およそ2300人の全社員を対象に2019年8月の1カ月間、金曜日を休みにして週休3日とするものでした。

公表された結果は主に以下のとおりでした。

  • 30分以内で終わる会議が前年8月に比して46%増加
  • 1カ月の売り上げを社員数で割った「労働生産性」は39.9%向上(リモート(遠隔)会議を実施する割合は21%増加)
  • 3年前の同時期に比し印刷枚数は58.7%、電力消費量が23.1%減少(コスト削減)

コロナ禍により多くの企業において売り上げが減少していることから、コストカットを意識しつつも業務効率・労働生産性の向上を図ることは、取り組まねばならない重要課題です。

そのため、コストカットの一環として従業員に休業してもらう(週休3日制導入)ことも選択肢の1つとして検討に値するかもしれません。 では、コロナ禍において従業員に休業させた場合、休業手当は支払わなくてもよい=即時コストカットにつながるのでしょうか。

2.会社都合により休業させると休業手当が必要な場合がほとんど

雇用契約により労働者は使用者に対し労務を提供する義務を負っておりますが、使用者はその労務の受領を拒むこともできます。つまり使用者は自身の都合で労働者を休業させることもできます。

しかし、労働者が休業したのだから使用者は給与を払わなくてよいとはなりません。
使用者は自身の都合で労働ができる労働者に労働をさせなかったため、法的には、金額は別としても給与の支払いをしなければなりません。

労働者を休業させた場合の支払い額について、労働者の最低生活の保障として「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とされています(労働基準法26条)。

つまり、使用者は、使用者側の都合によって労働者を休業させる場合には、最低でも平均賃金の6割の休業手当を支払うことが必要となります。

なお、民事上は賃金を10割請求される可能性がありますが、就業規則・雇用契約書に休業の場合の休業手当を平均賃金の6割を支給すると定めていれば問題ありません。または、労働組合との合意(労働協約)、従業員との合意(文書による合意)で休業手当の金額を平均賃金の6割以上で具体的に決めれば民事上も問題ありません。

新型コロナウイルスの影響により休業させる場合も就業規則・賃金規定によって対応が可能です。就業規則にそのような条項がない、または曖昧な条項しか規定されていないようであれば、コロナ禍においては非常に重要な規定となりますので早急に点検すべき条項といえます。

3.雇用調整助成金を活用して週休3日制の導入の検討を

コロナ禍が企業の経済活動や労働者の雇用に与える影響の大きさから、厚生労働省においては、企業や労働者を支援するための各種助成金制度を拡充・創設しています。

本来、雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。 しかし、コロナ禍の影響にかんがみた特例措置により、受給要件の緩和と給付額の増額が行われ、企業は従業員に支払う休業補償のかなりの部分について助成を受けることができます。

コロナ禍により経済活動に影響を受けている企業としては、この制度を利用し、コストカットをしつつ、意識的に業務効率を向上させていき、操業のペースを落とさないことも選択肢の一つではないでしょうか。

週休3日制として減給しない代わりに昇給を据え置く方向や、週休3日とせず昇給を希望する従業員の対応や振り分けなど様々な問題がありますが、週休3日制導入実験にチャレンジしていくという、危機を機会に変える発想と行動がコロナ禍という未曽有の事態を乗り切るためには必要かもしれません。

4.労務問題には弁護士等専門家の活用を

コロナ禍を機とした週休3日制導入における企業対応についてご説明させていただきました。

会社都合により従業員を休業させるケースは新型コロナウイルスによる影響の場面に限られませんが、新型コロナウイルスによる影響の場合には政府による休業支援策が設けられていますので、危機を乗り越えるための対応の一つとしてご検討をいただければと思います。

従業員を休業させる場合に限らず、労働法規制は複雑なうえに、その理解と運用を誤れば、会社の経営に大きな影響をもたらしかねません。労務問題については、労働問題に強い弁護士や法律事務所などの専門家の支援を受けながら制度設計と運用をされることをお勧めします。

当事務所では、解雇問題や未払残業代問題への法的対応、就業規則の作成・変更に関するアドバイスのほか、メンタルヘルスなどを理由とした休職問題への法的対応など、労働問題に関して幅広く支援をさせていただいています。従業員の労働問題に関してお困りの企業におかれましては、ぜひ一度ご相談ください。

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弁護士法人シーライト藤沢法律事務所

弊所では紛争化した労働問題の解決以外にも、紛争化しそうな労務問題への対応(問題社員への懲戒処分や退職勧奨、労働組合からの団体交渉申し入れ、ハラスメント問題への対応)、紛争を未然に防ぐための労務管理への指導・助言(就業規則や各種内規(給与規定、在宅規定、SNS利用規定等)の改定等)などへの対応も積極的に行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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